【読書】ジーヴスの事件簿 〜大胆不敵の巻〜 感想
お疲れ様です。
- 作者: P.G.ウッドハウス,P.G. Wodehouse,岩永正勝,小山太一
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2011/06/10
- メディア: 文庫
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時は20世紀初頭。ロンドンのマンションの一室に、執事ジーヴスは今朝も流れるように紅茶を携えやってくる。村の牧師の長説教レースから実らぬ恋の相談まで、ご主人バーティの難題をややいじわるな脳細胞が華麗に解決(?)。バーティたちが通うドローンズ倶楽部の愉快な面々も少し顔をのぞかせる、ユーモア小説傑作選第2弾!
才智縦横の巻を読んですぐこちらも読みました。
前巻からバーティとジーヴスがより打ち解けたのか、一層二人の掛け合いが面白くなっています。
バーティとジーヴスの関係性を知ってからの方が楽しめる本ですので、先に才智縦横の巻を読んでからこちらを読むことをオススメします。
二人の掛け合いの例を1つ。
町の小学校での運動行事。バーティと親友(?)のビンゴは、各競技の裏で行われている賭け事に参加します。
学校には、一見運動などできそうにない体型のハロルドという少年がいるのですが、ジーヴスは以前、いたずらをするハロルドを懲らしめようと追いかけ、彼が実は足がとても速いことを知っていました。
レースでハロルドに賭ければ大儲けできると目論むバーティとビンゴですが、行事が始まる数日前、胴元のステグルスにハロルドが走っているところを偶然目撃されてしまいます。
「ステグルスは、レースの前に子供をつぶしにかかるぞ」
「なんだって!それは考えなかった」ビンゴはぎょっとした様子だった。「そこまでやると思うか?」
「やつならきっとやる。ステグルスは悪いやつだ。ジーヴス、これからはぼくら、鷹の如く見張らなきゃならんぞ」
「もちろんでございます」
「連日連夜の不寝番だ」
「さようでございます」
「ハロルドの部屋でいっしょに寝てくれるか?」
「ご遠慮申し上げます」
「ぼくも嫌だなそれは。しかしだ」・・・
ジーヴス、それは断るんかい(笑)
二人の軽快なやり取りが心地よく、どんどん読み進められました。
この小説はもともとイギリス文学なのですが、そのまま翻訳されているとすると、日本での3段落ちというのは実は世界共通で使えるユーモアの手法なんだなと気づきます。
先程の箇所でも、
「ジーヴス、これからはぼくら、鷹の如く見張らなきゃならんぞ」
「もちろんでございます」
「ハロルドの部屋でいっしょに寝てくれるか?」
「ご遠慮申し上げます」
この形だと物足りない感じがします。
「連日連夜の不寝番だ」
「さようでございます」
この2行が入っていることで良いタメとなり、次の「ご遠慮申し上げます」が生きるのだなと。
各章で起こる事件はどれもただの厄介事という程度の話で、特に大きな問題はないです。そういう訳で、内容をじっくり考えるというよりも、肩の力を抜いて二人の軽快なトークを楽しみ、たまにクスッと笑える箇所があるという、ユーモア小説としてとても良くできてる作品でした。
文庫版はこの2冊しかないですが、ジーヴスのシリーズ自体はまだまだたくさんあるようで、機会があれば今度はそちらも読んでみたいと思います。
以上です。
よろしくお願いします。