【読書】こばなしけんたろう 感想
もはや「ラーメンズ」という肩書きを見ることのほうが少なくなった小林賢太郎さんが、小説幻冬に連載していた短編集をまとめたものです。
著者紹介でも「芸人」という文字が書かれていないほど活動が多岐に渡りすぎて、ファンの間でも、どこまで追っているか、何が好きかによって受け取り方が変わると思うので、先に僕の話を少しだけ。
ラーメンズの1人として小林賢太郎さんを知り、現在発売されているラーメンズ単独公演のDVDと、小林賢太郎戯曲集は全て購入しています。
他には、ソロプロジェクトで「Potsunen」「maru」のDVD、KKPで「TAKE OFF」までの全ての公演のDVD、「大喜利猿」の本1冊を購入しています。
ライブへ足を運んだことはありません。
『ラーメンズとして活動していた辺りまではソロ活動も含め追っていたけど、ラーメンズで活動しなくなってからはあまり追うこともなくなった』という、ラーメンズとして活動している小林賢太郎さんが好きな方の中ではよくあるパターンかなと思っています。そういうわけで一番好きなのはラーメンズでの小林賢太郎さんです。
さて、本短篇集ですが、小説という形式だけでなく、一言ネタをまとめたものから機内誌に似せて作ってあるものなど、多様な短編があり、むしろ普通の小説形式のほうが少ないくらいです。
中には、あの単独公演でコントとして行われていた「風と桶に関する幾つかの考察」の元ネタ(出典としてはこちらのほうが新しいので、厳密にはコントのほうが元ネタかもしれませんが)のようなものもありました。
この作品では他にも「雨降って地固まる」「ミイラ取りがミイラになる」があり、片桐仁さんとラーメンズのコントとして演じているのを想像しながら読むのも面白いです。
また、最初に収録されている「僕と僕の往復書簡」はソロパフォーマンス「Potsunen」で演じてそうとか、「ぬけぬけと嘘かるた」を読んでいるとバカリズムさんと一緒に行われていた「大喜利猿」での発想はこういうところから来ているのかなど、読んでみると小林賢太郎さんらしさが随所にあります。
例えば「ぬけぬけと嘘かるた」から1つだけ。
「あ」アリの行列は磁石を置くと乱れる
アリは自分の位置を知るのに地球の磁場を利用しているため、U字の磁石を行列をまたぐように置くと、混乱して他の巣に帰ってしまう。ちなみに、磁力の強い溶岩石のある青木ヶ原樹海にはアリがいないらしい。嘘。
これを読んでいると、別役実の「さんずいづくし」「道具づくし」を思い出しました。
別役実も「別役実のコント教室」の中で、全くの作り話を本当っぽく書くことが脚本の勉強にとてもなる。と言われていましたし、小林賢太郎さんもこういう遊びをよくされているのかもしれませんね。
笑える話からちょっとゾッとするものまで多種多様で、純粋に読み物としても面白く、ラーメンズは好きだったけど最近の小林賢太郎テレビとかは見てないなあといった方に是非読んでもらいたいと思います。
以上、よろしくおねがいします。