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【読書】さよなら、愛しい人 感想

 お疲れ様です。

 

 

さよなら、愛しい人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

さよなら、愛しい人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

 

刑務所から出所したばかりの大男マロイは、8年前に別れた恋人ヴェルマを探して黒人街にやってきた。しかし女は見つからず、激情に駆られたマロイは酒場で殺人を犯してしまう。現場に偶然居合わせた私立探偵フィリップ・マーロウは、行方をくらませた大男を追ってロサンゼルスの街を彷徨うが……。

 

読みました。

レイモンド・チャンドラー原作の探偵小説で、主人公の探偵フィリップ・マーロウの物語。

長編が全7冊あるのですが、村上春樹が翻訳しており、3年ほど前に全てを出版しました(それより前に他の方が翻訳されてはいるのですが)。

村上春樹が好きなのでこのシリーズも7冊とも買ってはいるのですが、正直なかなか読み進められず、何年も積まれていました。

折角全てが揃ったので、原作の出版順に読んでみようと思い(翻訳本は村上春樹の訳したい順に出されたので、原作の順番とは異なっていました)この前1作目の「大いなる眠り」を読み終え、次はこの「さよなら、愛しい人」。

この本も、2011年の文庫版発売のタイミングで購入自体はしてたのですが、なんとなく読み始めては途中で挫折しの繰り返しで、8年越しでやっと最後まで読むことができました。

村上春樹が高校の時に読んでいたと後書きにあり、確かにマーロウの立ち回りや台詞回しなど、初期の村上春樹作品に似てると感じます。

清水俊二訳の「さらば愛しき女よ」を読んだことがないので、あるいはこの訳し方自体が村上節なのかもしれませんが。

8年間刑務所で暮らして出社されたマロイの「なああんた、俺がいったいどこで8年も潰していたと思うんだ?」に対し、「蝶々でもとっていたのかな」と返すやり取りを読んでいると、どことなく「ダンス・ダンス・ダンス」を思い出しました。

村上春樹作品では登場人物達の台詞回しに「こんなやついねーよ」と思ってしまうのですが、舞台が海外なだけで自然に感じてしまうものですね。

他人との接点を持たないように生きながらも何故か都合よく何人かの女性は惹きつけて、現実ではまず言うことはない洒落たことを言って「あなたって本当に面白い人ね」とか言われてその晩セックスしてる村上春樹作品の主人公達に比べても、マーロウが女性を惹きつけるのは理解できます。

真相に絡む組織に殴られ、捕らわれ、薬漬けにされながらも僅かな手掛かりを頼りに捜査を続け、単身賭博船に乗り込むシーンはカッコいいですね。

その際の描写もかなり細かく、原作を読んだ村上春樹は「匂いまで感じるよう」と後書きで書かれていました。あいにく僕はその次に書かれていた「まあそこまで描写しても大抵の読者には適当に読み飛ばされるものですけどね」の「大抵の読者」の方でしたが……。

あとよくこの本で言われている「さよなら、愛しい人」よりも「さらば愛しき女よ」の方がタイトルとして良いという話ですけど、うーん、どうなんでしょうね。

このタイトルが誰が誰に向けて言っているのかという解釈で、このタイトルに対する受け取り方が変わってくるのかもしれません。

個人的にはむしろこちらの「さよなら、愛しい人」の方が好きです。

原作の出版順としては次は「高い窓」ですので、次はそれを読んでみようと思います。

 

以上です。

よろしくお願いします。